『代官の日常生活』

講談社選書メチエの1冊。昨年11月の刊行だが、今年になってから通勤電車の中で楽しく読んだ。筆者は、すでに『幕領陣屋と代官支配』(岩田書院)という大著を出されているいる代官研究の第一人者のひとりであるが、その本には代官のデータを収集したCD-ROMが付属しており、さらに内容を充実させた『江戸幕府代官履歴辞典』(岩田書院)という本も出されている。本書は、そのデータを縦横に駆使して、幕府代官の全貌に迫ったものであり、数量的分析が背景にあるだけに説得性の高い研究書になっている。

データベースを利用した分析の一方、個別史料に基づく記述も多数、取り上げられていて、読み物としても面白い。代官は収入も多いが支出も多いという事実。代官の不正よりも、むしろ下僚である手代による不正が多かったということなど、江戸時代の官僚制の実態が明らかにされている。

代官の日常生活 (講談社選書メチエ)

代官の日常生活 (講談社選書メチエ)