社会経済史学会近畿部会サマーシンポジウム

例年8月初旬に開かれていたが、今年は少し遅い開催となった。今回のテーマは「帝国とネットワーク―アジア史における「長期の19世紀」―」である。「長期の19世紀」とはオーガナイザーの定義によれば1770年代から第一次世界大戦開始まで19世紀とその前後を含めた1世紀半ほどの時期をさしており、いわゆるアヘン貿易の時期に一致するという。もっともこの時期を一括してとらえるべきかどうかについては、異論もあるようだ。

今回のシンポジウムは京大の籠谷直人先生を中心としたプロジェクトの中間成果が中心になっている。なかでも19世紀前半のアジア交易圏について膨大な新推計を示された杉原薫先生の研究は注目すべきであろう。

最後の討論では「自由貿易」の概念をめぐって面白い議論があった。また、アヘン自体、薬用や社交用としての用途が一般的でアヘン中毒はその一面に過ぎないという見方が台頭しているといった指摘にも驚かされた。

台風通過という状況にも関わらず、例年以上に東京やその他近畿以外の地域からの参加者が多かったのも今回の特徴であり、注目度が高かったことを示している。