「奪われる日本」

先日、大学院の授業で留学生から、なぜ日本はアメリカの言うことばかり聞くのかという質問をがあり、関岡英之氏の『拒否できない日本』を紹介した。その関岡氏が今月号の文藝春秋に書いた「奪われる日本」を読む。

この論文のテーマは郵政民営化のポイントはアメリカの要求する簡易保険の市場開放にあるという点だ。日本人は農耕民族のためか保険大好きという性向があり、簡保は世界に残された数少ない有力なマーケットなのだという。商人国家の中国人やインド人は保険は好まず、貴金属を信用するのである。

したがって、先の総選挙の本質は、「改革派」vs「抵抗勢力」ではなく、「米国迎合派」vs「国益擁護派」であるいうのが関岡氏の意見だ。後者のグループに属し、あえなく落選した小林興起氏や小泉龍司氏を高く評価する点でも、異色の論説となっている。

小泉一人勝ちとなり、将来の方向性に決着がついたようなムードの日本であるが、賛否はともかく関岡氏の議論にはぜひ耳を傾けるべきであると思いながら読んだ。