人口減少社会は怖くない

人口減少社会は怖くない

人口減少社会は怖くない

まず、タイトルに「人口減少社会は怖くない」とあるが、単純に未来はバラ色だという意見を述べているわけではないことに注意すべきだろう。人口減少社会は必要な変革を行いさえすれば乗り切ることが可能な試練であると、主張しているのである。

本書は豊富なデータをもとに、これからどういうことが起きるのか分りやすく解説しており、未来の見取り図を描く上で非常に有益な本であることは間違いない。いくつか、印象的な議論もあった。①保育料をむしろ値上げして待機児童を減らすことが出生率改善に役立つかも知れない(p.35)。②団塊世代は企業にとってこれまで重荷だった可能性がある。団塊世代の退職がマイナスとは必ずしもいえない。(p.54)。③購買力平価換算の日本の生産性は意外に低い。したがって(規制緩和により)生産性を上げる余地は十分にある。(p.124)

しかし、それでも未来の日本は危機だという人もいるだろう。筆者は、本書の最後にこう述べる、

危機の根本は、年金、医療、介護という高齢者のための社会保障を、不十分な保険料で、若者の負担によって受け取ろうとしているところにある。これは、資本主義の互恵的文化の否定であり、かつ、親の子供に対する情愛を賞賛し、「子供のために」より良い社会を築くという未来志向の日本文化を否定するものだ。(中略)日本の真の危機はここにある。

まったく同感というほかはない。