物理学校

物理学校―近代史のなかの理科学生 (中公新書ラクレ)

物理学校―近代史のなかの理科学生 (中公新書ラクレ)

東京理科大学の前身、「(東京)物理学校」の歴史をまとめた本。大学史というと大学が周年事業の一環として編纂した本がたくさん出ているが、意外に読まれることが少ないのではないか。本書は、母校の教員としてもどった新聞記者出身の著者が読み物としてまとめた大学史であり、一気に読める。

物理学校は理科教育普及のため有志により設立された学校であり、長いこといわゆる営利とは無縁の存在であったようである。卒業がきわめて難しい学校としても知られており、戦前の専門学校にあっては傑出した存在だったようだ。

ほとんどの教員は帝大をはじめとする学校や、政府官僚などが夜間に兼任で教えていた。昼間の激務を終え、なお質の高い授業を行ったことに敬意を表したい。関西大学も同じような形でスタートした学校であるが、あらためて私学教育の原点に触れた思いがした。