百姓から見た戦国大名

百姓から見た戦国大名 (ちくま新書)

百姓から見た戦国大名 (ちくま新書)

最近読んだ日本史の本でもっとも印象に残る本。日本史を専攻していながら、中世以前の研究動向に触れることはほとんどない。本書は近年の戦国時代研究の成果を分かりやすく紹介し、これまでのイメージを一新する。いくつかポイントを挙げると。

  1. 戦国時代は「飢饉と戦争の時代」であった。それ自体、特に不思議ではないが、戦争は武士の世界だけのものではなく、村は常に略奪の対象となっていたこと、また村そのものが、暴力行為の主体となるものだったことが興味深い。
  2. 江戸時代は「国家」とは藩をさす言葉だったが、こうした概念は戦国時代の産物。それ以前、国家とは日本全体をさしていた。またそれと同時に「御国」(武士、庶民両方を含む)という概念も生まれた。
  3. 租税制度に関して、織田信長豊臣秀吉の先進性を強調することが多いが、実は織田・豊臣に関する一次史料は非常に少ない。戦国大名で地方支配の詳細がわかるのは北条氏のみ。それによれば決して織田・豊臣が傑出していたわけではないことがわかるという(p.141)。
  4. 選銭により「精銭」が調達困難になったことが、年貢の現物納を認める結果となり、結果として石高制につながった。このことはあまり今まで強調されていなかったが、石高制を説明する上では決定的に重要だろう(p.168-169)。

近世経済の始まりを語るには、戦国時代とのつながりが極めて重要ということがわかった。