勘定奉行荻原重秀の生涯―新井白石が嫉妬した天才経済官僚

勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚 (集英社新書)

勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚 (集英社新書)

ちょうどこの時期の経済史を調べる必要もあって、興味深く読んだ。筆者は歴史教育の専門家であり、プロパーの近世史研究者ではないが驚くほど中身は濃い。まず、江戸の切絵図をもとに荻原の家を探し、さらに同輩の家まで調べている。荻原をめぐる人間関係を地図の上で展開することで駆け出し時代の荻原のイメージがつかめてくる。後には、近所の同輩にも容赦なく処分を下すといった冷徹な一面があるというようなことまで明らかにされる。

荻原の事跡について、これだけまとまった記述は他に例がないだろう。一連の政策を並べてみることで、彼がいかに革新的なアイディアの持主であったのかということがはっきりわかる。

最後は、彼の死をめぐる謎が追究される。本書はもともと小説として構想されてと書かれているが、このあたりは小説としても十分面白く読めるように思った。