江戸城・大奥の秘密

江戸城・大奥の秘密 (文春新書)

江戸城・大奥の秘密 (文春新書)

発売は明日20日であるが、著者からご恵送いただき、一足早く読了した。

「大奥」というと、テレビや映画のイメージが強烈だが(私は岸田今日子のナレーションが今でも耳に残っている)、近世政治史においては「節目節目に大奥が登場してくる」のであり、また改革においては最大の「難関」というほど大きな存在であった(p.9)。本書は、なぜ大奥がそのような権力を持っていたのか、という問いに正面から答えようとした一書である。

大奥改革では必ずその経費削減ということが叫ばれるが、大奥の経済力を支えているのは正規の費用だけではなく、様々なところから来る莫大な「付け届け」だった。つまり、大奥の権勢は、なんとかそれを利用しようとする人びとの欲望によって作り出されたというわけである。このあたり、幕府役人と大奥年寄のやり取りを記した史料にその本質が出ていて興味を引いた(p.89-91)。

こういった大奥の贅沢三昧も、気軽に外出も許されない窮屈な暮らしの代償だったのだろう。大奥女中にとって江戸周辺の寺社参拝(と芝居見物)が唯一ともいえるような息抜きであり、またそれが葵ブランド効果の観光需要喚起に役立ったというような話も興味深く読んだ。