読書通

「専門家の間で高く評価されているのは勿論であるが、必ずしも一般に喧伝されているとは思えない」著作家を12人取り上げた本である。たとえば、関西大学図書館に勤務しながら書誌総覧を完成させ、後に東洋大学教授に転じた天野敬太郎といった知る人ぞ知る傑物ばかりが取り上げられている。

高松塚古墳発見をめぐる網干善教と末永雅雄の確執など、驚くべきエピソード(p.72-73)なども書かれていて一挙に読み終えた。また、天野敬太郎の業績に触れた箇所では、「近年、隆盛に向かいつつある歴史人口学の台頭をあたかも予想するがごとく『人口統計』の項目を細かく分け…」(p.54)などという記述もあって、大いに参考になった。