京都の江戸時代をあるく―秀吉の城から龍馬の寺田屋伝説まで

京都の江戸時代をあるく―秀吉の城から龍馬の寺田屋伝説まで

京都の江戸時代をあるく―秀吉の城から龍馬の寺田屋伝説まで

著者の中村武生先生からご恵贈いただいた。中村氏は現在、京都の近世史に関してもっとも活発に活動している研究者である。最近話題になった「寺田屋建て替え問題」も、本書のもとになった新聞連載が発端となった。

連載記事がもとなので1節ごと基本的に読みきりの形になっているが、毎回、次が読みたくなるように話が展開されるので一気に読んでしまう。この本のよいところは、京都の歴史をあまり知らない人が読んでも面白いよう工夫しながら、一方で専門家が読んでも参考になる話題がいくつもちりばめられていることである。たとえば、私など御土居掘と江戸期洛中の関係を明らかにした第16話を読んで、これまであいまいに思っていた点が解消された。

それにしても、あとがきの「京都市は江戸時代を大切にしない都市である」という意見には同感。ただし、意外に江戸時代の研究が進んでいない点もまた事実である。本書の刊行が京都の江戸時代への注目を集めるため、今後大きな貢献をすることは間違いなさそうである。

中村武生氏のブログ
http://siseki-kukan.way-nifty.com/heiankyokyoto/