白い航跡

白い航跡(上) (講談社文庫)

白い航跡(上) (講談社文庫)

最近、吉村昭氏の作品をよく読むが、この本は特に面白かった。

主人公は薩摩藩出身で東京慈恵会医科大学を創立した高木兼寛。彼は軍医として脚気の研究に没頭し、食事の改善がその対策となることを突き止める。いち早く洋食を採用した海軍では脚気の撲滅に成功するが、高木に敵意を抱く陸軍は白米中心の食事にこだわりつづけた。

イギリス医学か、ドイツ医学か。臨床か、学理か。様々な対立に翻弄され続ける高木の一生を自ら集めた資料をもとに追ったすぐれた伝記。研究とはどうあるべきかを考えさせられる一冊だった。