中村武生とあるく洛中・洛外

中村武生とあるく洛中洛外

中村武生とあるく洛中洛外

著者の中村さんからご恵送いただいた。

私が中村氏の名前をはじめて知ったのは、実はかなり前のことになる。パソコン通信の全盛時代、niftyに「京都フォーラム」という会議室があり、「御土居の師」と皆から呼ばれる研究者が、御土居の研究と保存を訴えておられた。その方が中村さんだった。『御土居掘ものがたり』としてまとめられた成果は、私自身、京都の研究をまとめるのに非常に参考になった。

今回の中村さんの新著は、「街を歩いただけでは見つけることのできない、隠れてしまった京都1200年の歴史の痕跡を案内してほしい」という依頼に応じスタートした新聞連載記事が1冊になったものである。どの項目も、写真を含め4ページという短いスペースに京都の各区ごとまとめられており、最初から読んでもよし、とりあえず必要な部分からガイドブックとして読むのもよし、いろいろな使え方ができそうな本である。

タイトルにある「洛中・洛外」が1つのキーワードにもなっている。ふだん何気なく利用してるJR花園駅平安京西京極大路の位置にあるというのも初めて知った。そのすぐ北には宮内庁指定の陵墓があるが、ぎりぎり洛中の外にあるところに、穢れを嫌う意識が見えるという。

どのテーマも、単なる町の歴史の紹介だけでなく、一種の謎解きになっていて、ぐんぐん引き込まれる。この秋は、この本を片手に、京都の町歩きをぜひ楽しみたいものだ。