文学部がなくなる日

文学部がなくなる日―誰も書かなかった大学の「いま」 (主婦の友新書)

文学部がなくなる日―誰も書かなかった大学の「いま」 (主婦の友新書)

大学をテーマにした本は多いが、非常に有益な本である。著者は、大学職員から予備校に転じた異色の経歴の持ち主で、学生を送る側と入れる側の両方の立場をよく知っている。この間に横たわるある種の(とりわけ生徒にとっての)不合理を熟知しており、またその不合理が生まれる理由についてもよく理解しているので、こうした問題の背景が実にクリアになる。

著者はまた日本だけでなく外国の大学教育にもアンテナを広げている。最近の日本の大学では、アメリカのやり方を取り入れるのがブームになっているが、それが必ずしもうまくいかない理由を、日米の企業システムの違いから説明した個所はとくに面白い(第4章117ページあたりから)。

大学入試にしても、企業の採用システムにしても、一部分だけを批判することはたやすい。しかし、本当に大事なのは社会全体のシステムの違いを意識しながら評価を行うことであり、そこまで論じている本は意外に少ないのが現実だと思う。