世代間格差

世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

日本の人口構造はこの数十年の間に激変を遂げた。しかし、社会保障制度の見直しは遅遅として進まない。若い世代が高齢世代を支えるというシステムが温存された結果、世代間に大きな格差が生じている。

本書は、こうした問題を「世代間会計」という新しい考え方を用いつつ、きちんと数量的に明らかにするとともに、経済学的に持続可能なシステムの構築を提言している。将来への不安が増しつつある今、広く読まれるべき一書だろう。

たとえば、今年の政局でも大きな争点となった「子ども手当」に関しても詳細な分析を行ないつつ、今後は「直接的に出生促進を目的に掲げることも検討すべきである」というような提言を行っている。具体的には「フランスのような子どもにかかる手当についての対象を第二子以降に定め、かつ第三子以降は増額するという傾斜配分を行う」とする。

ちなみに、この給付方式は江戸時代版子ども手当ともいうべき「赤子養育仕法」とまったく同じ考え方である。先人の知恵の重みということについても考えさせられる提言といえそうだ。