島原の乱

島原の乱 (中公新書)

島原の乱 (中公新書)

島原の乱」というと、キリシタン一揆であり、天草四郎という少年がシンボルとされたということくらいは誰でも知っている。また、飢饉と重税が背景にあったという議論も聞いたことがある。

筆者は近年、明らかにされた島原の乱に関する当時者の記録を丹念に読み、殉教戦争というこれまでのイメージをくつがえしてゆく。キリシタンが逆に仏教徒を迫害した事例などを取り上げ、宗教戦争としての側面を強調する。

また、島原の乱に中世的な要素を見出す視点も面白い。島原の乱ではキリシタンと幕府側諸藩双方で多くの武装農民が参加していた。ごく最近読んだ『刀狩り』(岩波新書)とも関連するが、近世初頭には武士と農民の境はまだ曖昧模糊としたものであったのかも知れないという印象を強くした。