評伝日本の経済思想 後藤文夫

後藤文夫―人格の統制から国家社会の統制へ (評伝・日本の経済思想)

後藤文夫―人格の統制から国家社会の統制へ (評伝・日本の経済思想)

中村先生より、わざわざアメリカにまでご恵送いただく。

新官僚」のリーダー、あるいは「天皇陛下の警察官」として後藤文夫の名前は何度か耳にしていたが、具体的な事跡はあまり思い浮かばなかった。本書を読み後藤文夫がきわめて幅広い分野で、しかも戦前から戦後にかけ長く活躍していたことを知り、不勉強ぶりを反省させられた。

本書はまた、昭和恐慌から戦時経済期にかけての経済史の本としても面白く読めると思う。いつのまにか、後藤文夫の目を通して動乱の昭和前期をたどっているような気になる。また、最新の経済データと政治の動きをつき合わせる分析も新鮮だろう。

以前、茨城県で戦前から戦後にかけての青年団のまとまった文書史料を見つけたことがある。目録作成のためひと通り目を通すなかで、戦前と戦後の青年団はまったく違うものでありながら、何かまた1本つながっているような気にもなり、どのように理解すべきか考えさせられた。この点で、後藤文夫が青年団活動に深く関与し、しかも戦後もまたリーダーに返り咲いているというエピソードが個人的には非常に面白かった。