新書2冊 龍馬を継いだ男 岩崎弥太郎 (アスキー新書)・大江戸お寺繁盛記(平凡社新書)

龍馬を継いだ男 岩崎弥太郎 (アスキー新書)

龍馬を継いだ男 岩崎弥太郎 (アスキー新書)

安藤先生の新著をご恵送いただく。年末にきて、大変な龍馬ブームであるが、(今回の大河ドラマのテーマとなっている)龍馬との関わりの中で岩崎弥太郎をとらえる、そして三菱を海援隊を受け継ぐものとして評価するというのは、なかなか面白い視点だと思った。

岩崎弥太郎については、小説の題材のもなっている著名な人物であるが、従来の評価は維新後に三菱を創立し、西南戦争以後は政商として活躍してゆくプロセスに焦点があたっていた(このあたりは日本経済史の授業でも必ず扱う話だ)。本書はむしろ維新前、弥太郎が無名だった時代を中心に描くことにより、藩営事業と関わりの深い亀山社中海援隊、そして維新後の九十九商会から三菱会社への連続性を龍馬と弥太郎という2人の動きを軸に描き出すのである。

弥太郎といえば、三菱の創業者であり、根っからのビジネスマンというイメージが強いが、幕末期には藩士として異例の出世を遂げ、維新後もどちらかといえば役人志向が高かったという点(p.182)は面白い。歴史は結果からだけ見てはだめなのだということがよくわかるエピソードである。

岩崎弥太郎や初期の三菱については個人的にも興味があるのだが、その点は、次の項目にメモしてみた)

なお、安藤先生には、同じく近著として『大江戸お寺繁盛記』という本もある。

新書495大江戸お寺繁昌記 (平凡社新書)

新書495大江戸お寺繁昌記 (平凡社新書)

江戸時代の寺院、とくに大寺院は大掛かりなエンターメント企業との一面があったことを描いている。巻末には、対談なども収められていて、気軽に楽しく読むことができた。